月刊ブラック

備忘録+α twi:@dolly1004

泥色の月 青い紅葉編 #1

 僕の恋人が自殺した。そんな人間はいない。架空の人間が死んだのだ。そう思い月山馨瑞は東インドに向かった。社会科で聞いた東インド会社ってあったじゃないですか……そこに向かう為です。インドにはたくさんのものがあった。川、川、死体、驚くべきことに人間の皮膚を着た異形の者どもが闊歩していたのだ。東にあるインドの会社だから東インド会社。死んだ人間が集まるというのなら架空の死人も集まるのだろうか。死体があるところ生き人もあり。生きた人間はタコのスーツに身を包んでいた。「すみませんすみません。僕が好きだった人達の死体を探しているのですが」「そういった質問は答えかねます」彼(彼?)はそう言うと近くにいたターバン巻きの男を捕まえ、骨ばった背中に手を突っ込んだ。するする、するすると下へおろすと、不思議とそこから裂け目が出来、人皮を脱ぐようにそれは現れた。「それは……」「はい、ぎんなんです」見た目よりも臭いが気になった。臭かった。まさしくぎんなんといったぎんなんは、ごろんと横になるとガンジス川をどんぶらこどんぶらこと流れていった。「行きましょうか」タコ人間が行った「どこへ?」「アライグマのところへ」アライグマは害獣である。月山馨瑞は彼が後ろを向いたところで手元にあったぎんなんで頭をがつんと殴った。タコ人間は死に、川の向こうへと流れていった。ああ、そういえば私の母校はイチョウの樹が並び、秋はぎんなんの臭いでクソが垂れ流れたかのような臭いがしていた、とふと思い出した。都立桜修館中等教育学校の事である。

 

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<したいがしたくて十の位をずっと数えてるの。助けて>